Interview #2
HIRANO
TAKAYUKI
チーフディレクター 2013年/中途

― 経歴を教えてください

大学卒業後、テレビ番組制作会社に入社。海外のテレビ番組リサーチを約3年行いました。その後、別の制作会社に転職し、官公庁のVPやテレビ番組の制作進行を経て、ディレクターへ。約5年在籍の後フリーランスのディレクターとなり約12年間、企業VPからCS,BS,地上波のテレビ番組、WEB動画制作などを行い、2013年にロントラ(株)に入社しました。

― 現在の仕事内容は?

全国各地で市井の人々とふれあう旅番組で、ディレクター兼プロデューサー業務を行っています。毎回行き先となる候補地のリサーチ・提案を行い、その後ロケハンし、構成作家に狙いを伝えて台本を執筆してもらいます。
そしてロケでは出演者・カメラマンなどに撮りたいイメージを伝え、取材相手との調整をしながら撮影を進めて行きます。ロケ後はオフライン編集(仮編集)を経て、テレビ局と方向性を確認しながら、スタジオ編集(本編集)、MA(録音)を行い、完成まで責任を持って行います。
本編集ではテロップの文言を作成したり、仮ナレーション原稿を作るのもディレクターの仕事です。録音では、ナレーターにシーンによって読み方の違いを伝えたり(落ち着いた場面や感情を込めるシーンなど適宜)音楽や効果音が的確かの確認なども行います。
他のディレクターが担当する回では、プロデューサーとしてロケに同行し、出演者のケアや取材先との調整、仕上げ段階では編集内容の確認・修正やテロップ・ナレーション原稿に誤りがないか、より良い表現がないかなど確認。予算管理や、スタッフ・ポスプロのスケジュール管理なども行います。
番組によっては、演出業務も行います。上記と業務内容が重なる部分が多いですが、違いとしては複数のディレクターと一緒に制作をするため、番組の方針や色にバラツキが出ないように監修する業務が加わっています。また、ロケVTRとスタジオ収録を合わせた番組構成になっているものは、スタジオでの演出なども行っています。

― どこにやりがいを感じますか?

全国各地、世界各地に行くことができ、日常生活では知り合うことの出来ない人と知り合えたりすることに一番やりがいを感じます。個人的な旅行でも同様の場所へ行けるとは思いますが、より深くその町の人たちの暮らしの中に入っていくことができ、時間を共有できるのはとても貴重な体験です。特にロケハンで、ひとり知らない土地に行くのは不安でもあり楽しみでもあります。ロケハン段階でまだ取材内容が固まっていないことも多々あります。

現地に行って自分の足でネタを探さなくてはならない場合、面白いネタが本当に見つかるのか?ここで本当に番組が成立するのか?不安を抱えながら町を歩かなくてはなりません。見ず知らずの人に話しかけてネタを探し、人づてに紹介してもらった人のお宅まで押し掛けて話を聞いたりする中で、“これならイケル”と確信を得た時は、とてもうれしいものです。また、そういったものが数珠つなぎになって、番組全体のストーリーが面白く昇華していくのを感じた時は、言いようのない充実感を得ることができます。

― 仕事で一番印象に残った出来事は?

印象に残っている=キツかった仕事です(笑)。世界遺産の番組を担当したことがありました。ミステリー仕立てで世界遺産を紹介する特番です。フランス・ヴェルサイユ宮殿が舞台で、マリーアントワネットの死に関するミステリーがテーマでした。日本でリサーチしていても、現地のリサーチャーに依頼しても情報が思うように集まりません。ストーリーが描けずロケの内容・スケジュールも立てられません。しかし、世界遺産の取材は許可申請にも時間がかかるし、クレーンやレールなどの特機手配、現地で再現を撮るための役者や備品の手配などやることは山積みで時間は待ってくれません。

結局、現地に前乗りして、直接リサーチしたりロケの手配を行いました。後日日本のロケクルーが合流したのですが、到着日にホテルでカメラマンのスーツケースが盗難にあい、波乱だらけ。とはいえ、ひとつひとつ問題を解決して行くしかなく、コーディネーターに協力してもらったり、学生時代からの同志のツテでフランス人の映像作家を紹介してもらい、大分助けてもらいながら、答えを見つけていきました。苦労の多い番組でしたが、ミステリー部分や再現映像をしっかり撮ることが出来たおかげで、ヴェルサイユ宮殿の魅力を深掘り出来たように思います。

― ロントラってどんな会社?

愚直な人が多い会社だと思います。もっとずる賢くやってもいいのに、要領良くやってもいいのにと思うくらい、ばか正直に一生懸命仕事をしている人が集まっています。元々自分はフリーランス時代にロントラの仕事を手伝っていました。今はたくさん社員がいますが、当時は4人ほど。ロンドン五輪の取材をした時、帰国後から仕上げまで時間がなく編集が追いつかない状態でした。みなそれぞれ自分の仕事もあるだろうに、私の編集を寝ずに手伝ってくれ、なんとか間に合わせることができました。ヘトヘトになって完成した後に全員で飲んだお酒の美味しかったこと、美味しかったこと。もちろん番組制作をしていると、どこでもこういうチームワークはあると思います。ただロントラの熱量はハンパない感じです。私がその後ロントラに入社したのは、このチームでずっと仕事をして行きたいと感じたからです。

― テレビ制作会社ならではと感じることは?

小学校の理科の教科書にのっているような原理をエンターテイメントとして見せようという番組を制作しました。原理そのものを紹介するのはさほど難しくありませんでした。例えば、高い音・低い音によって音声の波形が変わるということであれば、音声を聴かせるとともにイコライザーの波形を映せばわかります。それをエンターテイメントとして視覚的に見せようということになりました。特性のガスパイプに火をつけて音楽を流し、音の高低によって炎の大きさの違いを見せる、平らな鉄板の上に砂を置き、高低音の振動でいろいろな砂の模様を描くなど試みたのですが、理屈では合っていても思うように行きません。スピーカーをあてる位置を微妙に変えてみたり、曲を変えてみたり、砂の粒子を変えてみたり、組み立てた装置の素材を別のものに変えてみたりと、ひたすら会社で実験を繰り返す日々。
撮影したり編集するのが自分の仕事だったはずなのに、、、
最終的には、出演者が指揮者となってタクトを振り、荘厳なクラッシック音楽に合わせて、炎と砂模様とビーズの波形が見事にマッチしました。小学生や中学生の自由研究のようなことを大の大人が真剣にやる。制作会社あるあるです。

― どんな人がこの仕事に向いていると思いますか?

正直わかりません。好奇心が旺盛で、人付き合いが良くて、テレビや映画などよく見ていて、人を喜ばせるのが好きで、、、という人が向いていると言われることがありますが、そういう人でこの業界を離れていった人が何人もいます。細かい性格のほうが向いていることもあれば、大雑把な性格のほうが向いていることもあります。明るく元気な人はもちろん受けがいいと思いますが、中にはそれを嘘くさいと感じる人もいて、おとなしくても真摯に接してくれる人が信用されることもあります。
仕事なので、必ずしも自分のやりたい番組ばかりとは行かないのですが、続けていると“いい出会い”があります。それがスタッフの時もあれば、取材相手の時もあるし、風景だったりテーマだったりの時もあります。
そんな良縁に恵まれた時、この仕事をもっと続けてみたらどんな出会いが待っているんだろう?どんな世界が待っているんだろう?と思うことがあります。そう思えた人はこの仕事に向いているのかも知れません。

― 今後、どんな番組を作りたいですか?

食とお酒をモチーフに、世界各地を回り、そこに住む人々の日常生活に踏み込んでいくような番組を作りたいです。どの国・どの地域でも食とお酒は普遍的なもので生活から切り離せないものですし、伝承されてきたもの、個人的な思い入れがあるものなど様々なストーリーを内包していることが多々あると思います。小さな人間ドラマを切りとって積み重ねたいなと思います。番組にかこつけて各地で飲み歩きたいという不純な動機もありますが。

NEW POST